社会保険労務士法人アーリークロスの社労士ブログ
こんにちは!福岡市にあります社会保険労務士法人アーリークロスです。
今回は、「インターンシップに関する注意点」についてお話します。
新卒向けのインターンシップを導入している企業はとても多いですよね。インターンシップ受け入れのピークは毎年8月と2月と言われています。事業主様や人事担当者様は2月の受け入れ準備で忙しい頃かもしれません。
現在使われている「インターン」とは、「インターンシップ」の略で、学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うことを指します。
インターンシップ生(インターン生)を受け入れるにあたって、どのような点に注意すべきなのか、お話したいと思います。
インターンシップとアルバイトは違う?
「インターンシップ」とは就業体験・業界研究・就職活動といった目的のもと、実際に働いたりワークショップを受けたりすることを指します。
労働力の提供のために雇用されているアルバイトとはそもそもの目的が異なります。
インターンシップは就業体験が目的のため、単に繁忙期の労働者確保等のために制度を利用することは認められません。
インターンシップ制度を悪用して無給で単純作業に従事させた事例などもありますので、十分に注意が必要です。
インターンシップ生は労働者なの?
以下のような実態がある場合、労働者に該当するものと認められます。
- 見学や体験的な要素が少ない
- 使用者から業務に係る指揮命令を受けている
- 学生が直接の生産活動に従事し、それによる利益・効果が当該事業所に帰属する
- 学生に対して、実態として何らかの報酬が支払われている
インターンシップはあくまでも「就業体験」であることを前述しましたが、社員の仕事を実際に体験してもらうことを予定している企業も多いはずです。
この場合、現実の業務を行うわけですから、「使用者から指揮命令を受ける」や「直接の生産活動に従事している」に該当し、「労働者」として扱われるべきです。
労働者であれば、「賃金の支払」「労働時間の管理」「割増賃金の支払」「労働条件通知書の明示」などが必要になります。また、最低賃金も適用されますので、インターンシップ生だからといって低い賃金で労働させることはできません。
インターンシップ生は社会保険に加入する?
健康保険・厚生年金保険への加入の必要性をお伝えします。
インターンシップ生であっても以下の項目すべてに該当する場合、社会保険の被保険者となります。
- 1週の所定労働時間および1か月の所定労働日数が常時雇用者の4分の3以上
- 日々雇い入れられる人でない
- 2か月以内の期間を定めて使用される人でない
- 所在地が一定しない事業所に使用される人でない
- 季節的業務(4か月以内)に使用される人でない
- 臨時的業務の事業所(6か月以内)に使用される人でない
週5日の1日6時間などフルタイムに近い労働時間で働くインターンシップ生は、社会保険の加入が必要になりますね。
ちなみに、特定適用事業所(※1)に該当する場合は、短時間労働者(週の労働時間が20時間以上)でも社会保険の被保険者となる場合があります。短時間労働者が被保険者となる一定の要件に「学生でないこと」が含まれますが、最近では第二新卒向けのインターンシップ制度を導入している企業もありますので、注意が必要です。
さらに大きな注意点は「雇い入れの期間」です。
社会保険への加入が必要となる要件の中に「2か月以内の期間を定めて使用される人でない」とありますが、これはインターンシップとしての雇い入れ期間だけを指すのではありません。
例えば内定者インターンシップのように、すでに内定承諾がされていて、4/1〜正社員として入社が決定しているのであればそれも含めて「2か月以内の期間」であるかを判断する必要があります。
以下の例は、ともにインターンシップ開始時点で内定承諾がされていた場合です。
例1)2/1~3/31までの2か月間をインターンシップ生として働き、4/1から正社員
⇒2/1時点から加入が必要
例2)2/1~2/14の2週間のみインターンシップ生として働き、期間を空けて4/1から正社員
⇒4/1時点から加入が必要
(※1)「特定適用事業所」とは事業主が同一である一または二以上の適用事業所の被保険者(短時間労働者を除く)の総数が直近1年のうち6カ月以上100人を超える適用事業所をいいます。
インターンシップ生は雇用保険に加入する?
雇用保険への加入の必要性をお伝えします。
インターンシップ生であっても以下の項目すべてに該当する場合、雇用保険の被保険者となります。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 31日以上の雇用見込みがある
- 学生でない
「学生なら被保険者に該当しないんだ。インターンシップ生は全員加入しなくて大丈夫だよね!」と思われた方!ちょっと待ってください!!ここでいう「学生」には注意が必要です。
以下に該当する「学生」は雇用保険の被保険者となります。
- 卒業見込証明書を有する者であって、卒業前に就職し、卒業後も引き続き当該事業に勤務する予定のもの
- 休学中のもの
- 通信教育、夜間、定時制の学生
学生だから大丈夫!と一括りにして安心していると、誤った手続きをしてしまう可能性があります。
令和5年度からのインターンシップの取扱い変更について
令和4年9月に、「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」改正資料が公表されました。改正内容としては、以下の2点です。
①学生のキャリア形成支援に係る取組みの類型化
②インターンシップで取得した学生情報について、一定の基準のもと、広報活動・採用選考活動の開始時期以降に限り使用可能となった
ここまででお話してきたインターンシップの基本的な考え方から、少し込み入った内容にはなりますが、併せて是非ご確認ください。(リンクはページ下部の参考一覧へ)
「インターンシップ」という名称にとらわれず、「実際にどのようなことをするのか?(見学のみなのか、業務を行うのか)」「業務を行うのであればどんな働き方をするのか」が重要になります。
受け入れ前に今一度注意点を確認し、学生と企業、双方にとって有意義なインターンシップとなることを祈っています!
アーリークロスでは様々なお手続きを代行させていただきます。「初めてのインターンシップ受け入れで不安」「今までの手続きに自信がない」などお困りの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
お読みいただきありがとうございました。
ご相談・ご依頼はお気軽に社会保険労務士法人アーリークロスまでお願いいたします!
【参考】
社会保険適用事業所と被保険者:https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20150518.html
雇用保険被保険者について:
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000637955.pdf
インターンシップ受け入れにあたって(長野労働局)
インターンシップの推進に当たっての基本的考え方(経済産業省、文部科学省、厚生労働省)