社会保険労務士法人アーリークロスの社労士ブログ

2022.12.16

「給与計算 間違いやすい落とし穴 その3」

こんにちは!福岡市にあります社会保険労務士法人アーリークロスです。

「給与計算 間違いやすい落とし穴」をテーマにしたブログの第3弾です。

今回でこのシリーズは一旦終了となります。その1、その2と併せて、是非お読みください!

最終回の今回は、給与計算の中でも「控除」項目についてご説明します。

・そもそも「控除」項目とは…?

給与明細をお持ちの場合は、お手元で一度ご確認ください。(ない場合、検索エンジンで「給与明細」と検索すると、サンプルのフォーマットを閲覧できます。)

オーソドックスな給与明細では、「勤怠」「支給」「控除」と、大きく分けて3つの欄が表示されています。

勤怠:出勤日数、労働時間、残業時間等を表示(勤務実績のこと。計算根拠となります。)

支給:基本給、各種手当等の「会社から従業員に払う」ものを表示(プラス)

控除:住民税、社会保険料等の「給与から天引きしているもの」を表示(マイナス)

控除項目とは、この3つ目のことです。

給与計算担当者は、住民税や社会保険料の通知等をもとに、各従業員の控除金額を計算・確認することになります。

弊社のTwitterでも、最近「給与からの天引き」(控除項目)についてツイートしたところでしたが、何でも控除できるというわけではないので注意が必要です。

・控除項目の内容を見ていきましょう!

①住民税の控除

 住民税には、「普通徴収」と「特別徴収」の2つの方法があります。

 普通徴収:本人が市町村へ直接納付

 特別徴収:会社が本人の給与から天引きして、代わりに納付

 特別徴収の対象者と徴収金額は、毎年5月~6月ごろ会社へ届く「特別徴収決定額通知書」にて確認できます。

 途中入社・退社の方については、住民税異動届の提出等、別途対応する必要があります。

②所得税の控除(源泉所得税・源泉徴収税)

 所得税の控除は、「源泉徴収税」とも言われていますね。住民税と異なり、通知書に基づく徴収ではありません。(細かく言うと、住民税は前年分の所得に対して課税され、既に決定されたものであるのに対し、所得税はその年の所得に対しての課税となります。所得税は12月の給与支給までは税額が確定しないため、このような違いが生じます。)

 給与の支給金額に応じて、概算で天引き・納付しておき、年末調整や確定申告で最終的な年税額を確定するという流れになっています。

 給与と賞与で源泉徴収税の計算方法が異なるということも、注意すべきポイントのひとつです。

 詳細は、国税庁HPの「源泉徴収税額表」をご確認ください。

(参考)国税庁HP パンフレット・手引き

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/01.htm#a-03

③社会保険料(健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料)の控除

 健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料は、資格取得時や定時決定・随時改定の際に決定された標準報酬月額・等級に応じた保険料を控除します。

 他の控除項目と比べ、間違いやすいポイントが多いです。特に、以下は要チェックです。

 ☑当月徴収か翌月徴収かによって控除開始・徴収額変更のタイミングが異なる

 ☑40歳・65歳・70歳・75歳到達のタイミングで控除内容に変更が生じる

 ☑退職した場合、退職日によっていつの保険料まで徴収かが変わる

 ☑2か所以上に勤務している場合、届出をしたうえで按分計算が必要

(参考)弊社ブログ「社会保険の算定基礎届 出した後の保険料はどうなる?」

全国健康保険協会「都道府県毎の保険料額表」

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat330/sb3150/

④雇用保険料の控除

 社会保険料とは異なり、雇用保険料は通知書が届くものではありませんし、毎月納付するものでもありません。

 その時の従業員負担分の「雇用保険料率」に応じて雇用保険料を計算し、控除する必要があります。

 控除した雇用保険料は、会社負担分・労災保険料と併せて、労働保険の年度更新(毎年6月~7月10日)の際に申告・納付しなければなりません。

(参考)弊社ブログ「2022年10月から雇用保険料が引き上げに!」

⑤その他(労使協定がある場合)

 ①~④以外で控除する場合には、労使協定が必要となります。(届出は不要)

 労使協定だけでは十分でなく、控除について従業員本人からの同意または就業規則等の根拠が必要となります。

⑥例外的なもの

 例外的なものとして、給与からの差押えが発生する場合があります。

 従業員の方が税金や家賃等を滞納した場合で、督促しても支払いがない場合は、会社宛てに差押え通知が届きます。

 こちらは、ないことが一番ですが、通知が届いた際は、控除のうえ会社から差押え額を支払わなければなりません。

 3回にわたって、給与計算のポイントを解説してきましたが、いかがでしたか?

 「自社の給与計算が正しいのか?」と、不安になられた事業主様もいらっしゃるかもしれません。是非、お気軽に弊社までご相談ください。

 今回もお読みいただき、ありがとうございました。

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