社会保険労務士法人アーリークロスの社労士ブログ
こんにちは!福岡市にあります社会保険労務士法人アーリークロスです。
「給与計算 間違いやすい落とし穴」をテーマにしたブログの第2弾です。
前回に引き続き、事業主の皆様、給与担当者の皆様は是非ご確認ください!
今回は、給与計算に関連して次の2点を解説します。
①「所定外(法定内)残業」と「法定外残業」の違い
②割増賃金の計算方法
①「所定外(法定内)残業」と「法定外残業」の違い
給与明細や勤怠システム等で、この2つの言葉を見たことがある方も多いのではないでしょうか。
「所定外(法定内)残業」と「法定外残業」は確かに同じ「残業」ではありますが、給与処理上は全く違うものです。
所定外(法定内)残業
…所定労働時間以外に労働した時間で、法定労働時間を超えない部分
割増支給しなくてよい(×1.0)
※「残業代を支払わなくてもいい」ということではないので要注意
法定外残業
…法定労働時間を超えて労働した時間
割増支給しなくてはならない(×1.25以上)
所定労働時間は、会社や労働者によって異なります。「働く時間として契約している時間」が所定労働時間です。
変形労働時間制を採用していない会社であれば、フルタイム勤務の方の所定労働時間は1日8時間、週40時間となっていることがほとんどです。
1日8時間・週40時間が労働基準法において定められている「法定労働時間」であるため、法定ちょうどを所定労働時間に設定しているということです。ただし、週休3日制の導入等により、もっと少ない時間を所定労働時間として定めている例も増えてきています。
パートタイム・アルバイトの方はこれより短い時間で契約しているかと思います。
例えば、1日6時間・週3日の契約で雇用されている場合は、1日6時間・週18時間が所定労働時間となります。
所定外(法定内)残業は、この所定労働時間以外の労働で法定時間を超えない部分を言いますので、図示すると次のようになります。
さらに長い時間働くと、法定労働時間を超えるため、その部分については「法定外残業」となります。
1日8時間・週40時間のフルタイムの方は、所定時間=法定時間となっているため、そもそも「所定外(法定内)残業」が発生しないということにも注意が必要です。
また、以上は変形労働時間制を採用していない場合の、非常に典型的な例です。
変形労働時間制を採用している場合は、残業の計上の仕方が少し変わってきますがここでは割愛します。
②割増賃金の計算方法
次は、残業代計算のもととなる「割増基礎」に着目します。給与計算の際は、割増基礎をもとに1時間当たりの金額を計算し、割増率を掛けて残業代を計算しています。
時給制を例にとると簡単です。すでに1時間当たりの単価を「時給」として設定しているためです。
(例)時給 1,000円の人の場合
所定外(法定内)残業:20時間
法定外残業 :10時間
所定外(法定内)残業手当:1,000円 × 1.0 × 20 = 20,000円
法定外残業手当 :1,000円 × 1.25× 10 = 12,500円
では、月給の場合はどうなるでしょうか?時給の人と違い、月単位での金額を設定していますし、基本給の他にも色々な手当を支給しているため、「どの金額をもとに」「どんな計算で」時給単価を割り出すかが分かりづらいかもしれません。
(1)どの金額をもとに時給単価を割り出すか
原則として、基本給・手当をもとに割り出しますが、次の手当に限り、除外することができます。
・家族手当
・通勤手当
・別居手当
・子女教育手当
・住宅手当
・臨時的に支払われた賃金
・1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
(ただし、手当の実態によっては除外できない場合もあります)
(2)どんな計算で時給単価を割り出すか
月給制の場合、月あたりの金額として設定されているため、月の所定労働時間をもとに1時間あたりの単価を割り出します。
(例)基本給 : 200,000円
家族手当 :10,000円(扶養人数によって変動する手当)
資格手当 :20,000円
月の平均所定労働時間 :173時間
所定外(法定内)残業 :なし
法定外残業:20時間
割増基礎の計算
200,000円 + 20,000円 = 220,000円
※家族手当を除外
※資格手当は除外できないので注意
1時間あたりの単価
割増基礎 ÷ 月の所定労働時間(月の平均所定労働時間)
= 220,000円 ÷ 173時間
=1,271.68円
残業代
1,271.68円 × 1.25 × 20時間 = 31,792円
※もし所定外(法定内)残業があった場合は、1,271.68円×1.0×所定外(法定内)残業時間数も併せて支給
「月の所定労働時間」は、実際のその月の所定労働時間又は月の平均所定労働時間を使用します。
お読みいただきありがとうございました。
今回は少し実務的な内容になりましたが、いかがでしたか?
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