社会保険労務士法人アーリークロスの社労士ブログ

2022.12.20

「知っているようで知らない!?年次有給休暇」

こんにちは!福岡市にあります社会保険労務士法人アーリークロスです。
今回は、「年次有給休暇」について取り上げます。

もうすぐ今年も終わりますね(早いですね〜)。年末年始のお休みに合わせて年次有給休暇を取得し、大型連休にされる方も多いことと存じます。
「有給休暇を取得できる」ということは皆さんご存知かと思いますが、「正しい取扱い」については、知らないという方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?
今日は、知っているようで知らない「年次有給休暇」についてお話します。

突然ですが、問題です!!
次の中に年次有給休暇について間違った取扱いがあります。どれが間違いか分かりますか?

①年次有給休暇は、上司の承認の下、取得させている。

②年次有給休暇は、利用目的を確認してから取得させている

③週3日勤務のアルバイトには年次有給休暇を付与していない

④未消化の年次有給休暇は買取している

分かりましたか?

正解は「全部間違い」です。
何が間違っているのか1つずつ見ていきましょう。

そもそも年次有給休暇とは?

年次有給休暇とは、一定期間勤続した労働者に対して、心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するために付与される休暇のことです。付与された年次有給休暇は、原則として「労働者自らの請求・取得」ができます。

年次有給休暇は労働者に与えられる当然の権利のため、①のように取得を上司の承認制とすることは出来ません。

また、休暇をどのように利用するかは労働者の自由です。②のように取得理由の確認を必須とすることも望ましくありません。

年次有給休暇の付与について

年次有給休暇は次の2つの要件に該当する労働者に与えられます。

  • 雇い入れから6か月間継続勤務
  • 全労働日の8割以上を出勤

正社員・アルバイト・パートタイムなど、雇用形態に関係なく年次有給休暇を取得する権利があります。

また、週の所定労働日数が4日以下かつ週の労働時間が30時間未満の労働者に対しては、その労働日数に応じた日数の年次有給休暇が付与されます。そのため③のように労働日数が少ないからといって、年次有給休暇を与えなくて良いという取扱いは間違っています。

年次有給休暇の買取について

「忙しくて休暇が取れないから買取って欲しい」という労働者の方もいらっしゃるかもしれません。ですが、買取は違法です。

年次有給休暇は「心身の疲労を回復し、ゆとりある生活を保障するため」に付与される休暇です。しっかりと休んでリフレッシュすることが目的ですので、休暇取得しやすい雰囲気や仕組みを作ることも重要になります。

(法定以上に付与した有給休暇については買取できるなど、違法とならないケースもあります)

労働者の希望する日を変更することはできないの?

「労働者の権利であることは分かったけど、繁忙期に沢山休まれても困るなぁ」と思われた使用者の方もいらっしゃるのではないでしょうか?確かに、突然長期間の休暇を取得されてしまうと「通常の業務が回らない」ことも懸念されますよね。

労働基準法では、「時季変更権」が認められており、請求された時季に休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができます。ただし、使用者は労働者が指定した時季に休暇が取れるように、勤務予定を変更したり、代わりに勤務する者を確保したりするなどの、「配慮」をすることが求められていますので、時季変更権を濫用することはできません。

少しずつ「年次有給休暇」への理解が深まって来たのではないでしょうか?

働き方改革の推進もあり、取得率は年々上昇していますが、それでも全体の約半数の労働者は休暇の取得に「ためらい」を感じているそうです。

より休暇を取得しやすい環境を作るため、2019年4月から「年5日の年次有給休暇の確実な取得」が義務化されていることはご存知ですか?

年5日の確実な取得って?

年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、毎年5日間を確実に取得させることが使用者に義務付けられました。

これは、「労働者自らの請求・取得」、「使用者による時季指定」、「年次有給休暇の計画的付与制度による取得」のいずれかの方法により年5日以上の年次有給休暇を取得させるというものです。

年次有給休暇は原則として「労働者自らの請求・取得」でしたよね。では「使用者による時季指定」、「年次有給休暇の計画的付与制度による取得」って?・・・1つずつ確認していきましょう。

【使用者による時季指定】
使用者は、労働者ごとに、年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に5日について、取得時季を指定して年次有給休暇を取得させなければなりません。

〈解説〉

  • 「労働者自らの請求・取得」や「年次有給休暇の計画的付与制度による取得」により、労働者が取得した年次有給休暇の合計が5日に達した時点で、使用者から時季指定をする必要はなく、また、することもできない。
  • 時季指定に当たっては、労働者の意見を聴取しなければならず、また、できる限り労働者の希望に沿った取得時季になるよう、意見を尊重するよう努めなければならない。
  • 使用者による年次有給休暇の時季指定を実施する場合は、対象となる労働者の範囲や時季指定の方法について、就業規則への記載が必要。

〈例〉

 4月1日に年次有給休暇が10日付与された労働者

 時季指定を行う例:
 本人の希望で5月と6月に2日間の休暇を取得⇒5日まであと3日足りない。
 労働者の意見を尊重した上で「8月のお盆に3日間の休暇を取得してください」と指定。

 時季指定できない例:
 本人の希望で5月〜9月で合計8日間の年次有給休暇を取得⇒5日に達している。
 使用者の時季指定は不要(できない)。

【年次有給休暇の計画的付与制度による取得】
この制度を導入すると、年次有給休暇の一部について、使用者が計画的に休暇取得日を割り振ることができます。

〈解説〉

  • 導入には就業規則への記載、労使協定の締結が必要。
  • 付与日数から5日を除いた残りの日数について、使用者が取得日を割り振ることができる。

〈メリット〉

  • 年次有給休暇の取得状況等を管理しやすくなり、計画的な業務運営が可能。
  • 時期が予め指定されているため、労働者はためらいなく休暇を取得できる。
  • 導入した会社は、導入していない会社より年次有給休暇の取得率が高い。

〈例〉

 年次有給休暇の付与日数が10日の労働者:
 5日⇒使用者が計画的に付与できる。
 5日⇒労働者が自由に取得できる。

 年次有給休暇の付与日数が20日の労働者:
 15日⇒使用者が計画的に付与できる。
 5日⇒労働者が自由に取得できる。

いかがでしたか?年次有給休暇とひとことに言っても、意外と複雑ということがお分かりいただけたのではないでしょうか?

正社員に有期契約にパートタイムに・・・様々な働き方の従業員に対し、年次有給休暇を正しく付与し、運用し、管理することはとても大変です。

一緒に働く労働者がお互いに気持ちよく休暇を取得するためにも、「休みやすい職場環境作り」も大切になってきますよね。

アーリークロスでは、年次有給休暇の正しい取扱いや管理、職場環境作りのベースとなる就業規則の作成など、様々な面でサポートが可能です。

「自社の年次有給休暇管理って本当に正しいのかな?」「取得率が上がらない」とお悩みの場合はぜひお気軽にご相談ください。

参考サイト

厚生労働省 働き方・休み方改善ポータルサイト
https://work-holiday.mhlw.go.jp/kyuuka-sokushin/jigyousya.html

お読みいただきありがとうございました。

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